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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

ヤンヤン夏の思い出/じいちゃんたちが死んでいく

「カップルズ」「恐怖分子」「クーリンチエ殺人事件」などで知られる台湾の映画監督エドワード・ヤン監督が死んでしまった。もう随分前のことになるのだけれど。

素晴らしい傑作の中でも「ヤンヤン夏の思い出」は特に好きな作品でした。

おじいちゃんと孫の日常を淡々と描いて、幼さというものがいかに「死」に敏感なのか、死に向かって加速しつつある大人よりもずっと執拗にそれを探り当てようとするのだと教えてくれました。

そういえば僕はノストラダムスの予言が子供の頃ずっと恐ろしくてなりませんでした。恐怖の大王というのが降ってきてすべてを終わらせる、そのイメージより、イメージできない「終わり」が怖かったからです。

時間が止まるのか、それとも全てが壊れてしまった空間に時間だけが流れ続けるのか、どちらの想像も子供の僕を発狂寸前にしました。

ようするに終わることも、終わらないことも耐えられなかったのです。いまでも、子供の感覚が蘇って怖くなることがあります。

大人は、本当の謎や恐ろしさに目をそらしていられる能天気な生き物なのかもしれません。本当に年老いるまで、子供の頃の不思議に戻ってくることはないのかもしれません。

主人公ヤンヤンは、死んだおじちゃんが存在として消えてしまったこと、その不思議さを持ち続けるでしょうか。映画ではそこまで描かれていないのでわかりません。

カート・ヴォネガットに続いて好きな作家がまた死んでしまいました。残念ですが、実はそれほど残念だという感じもしません。死を「残念」というのは、大人の社交的な言葉使いだなと思います。

じいちゃんの死を目の当たりにしたヤンヤンは決してそのことを忘れないでしょうが、次の日は友達とケロっと遊んだんじゃないでしょうか。

すごく優しい映画なので見てください。