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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

アンチ・ヴァイラル/ケロイド状の聖痕

シネマテークで『アンチ・ヴァイラル』を観ました。

予告編でどろどろぐちょぐちょの映像を覚悟(期待?)していたのだが、実物は思ったよりもスマートな映画でした。

セレブ崇拝が行き着くところまでイってしまった未来のストーリー。

セレブの罹患したウィルスを採取してそれを培養、ファンたちはそれを買取り自分たちに接種するというイカレたビジネスが流行しているんですね。

現代で言えば誰でしょう?

レディ・ガガとかアン・ハサウェイとかアンジェリーナ・ジョリーの病気をそのまま自分にも移すってことになるのかな。

またセレブたちのウィルス(あるいはDNA情報だったか?)から培養した肉をファンたちはこぞって買い付けて食べているのです。ジョゼフ・ゴードン=レヴィット肉とかをレバニラ炒め風にしてご賞味あれ!!!

$続・エビで龍を釣る

いかがでしょう? おもしろ胸クソ悪い映画でしょう。

この監督は、裸のランチビデオドロームなんかで有名なデヴィッド・クローネンバークのご子息が製作しておる。数々の気色悪い作品の生みの親であるクローネンバークのわりかしよくできた作品である息子ブラントン・クローネンバーグがその遺伝的本領を発揮したかどうかは映画をじっさいにご覧ください。

主人公が前編にわたって体調が悪いのも見所である。

よれよれながらも健気に家宅侵入やら不意打ちなどをかますところも、イケメンなのでサマになるのです。これが汚いおっさんだったら汚い映画になっていただろう。

この主人公ってのはまぁ、自業自得なんですけど、セレブのウィルスを会社から持ち出して裏社会に横流ししてるんだね。で、その挙句、てめえもカリスマ女優のウィルスを「ハァハァ」言いながら接種して、死に至る謎の病に罹ってしまうという、同情の余地は猫の額くらいしかないっちゅう筋立てです。

ちなみ猫はブリティッシュショートヘアをイメージしてください。

ともかく主人公のシド・マーチ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は後半よく血を吐く。

げぼげぼげぼ

僕は潰瘍性大腸炎を患っていたので、自分の記憶がフラッシュバックして、観ててツラかったです。僕の場合はイケメンでもないし、吐血でなく下血でしたけど(なんちゅう落差だろう)

誰か輸血してやってくれ! あの手の変態カッコつけマンはきっとRH-のB型だろう(←他意はありません)

まぁ、言ってみれば、世界中が変態で、そのうちの一変態の成れの果てを追っかける映画なんですよ。

セレブになりたい。なれないけどなりたい。だからセレブ(と肉体的にひとつに)なる。

というのが、この映画の狂おしい願望。でもさ、それほど奇異とするにはあたらない。

なでなら、キリスト教圏では、パンをキリストの肉とし、ワインをその血とし、神の子というカリスマをその身に宿すという行為はヴァーチャルな儀式として何百年も行われているから。

いまさらガタガタ騒ぐんじゃねえって感じでしょうか。

以前の記事でカニバリズムについて書いたことがあったような気がします。そこでも対象を一体化するための食人行為ってのに触れましたが、これはある意味究極に近い「取り込み」だよね。

キリスト教圏に限らず、また世の東西を問わず、人間の性向の奥底にはそんな欲望が秘められているのかも。そういう意味では僕らのコアにグサっと刺さる映画でもある。

あまり多くを語らないスタイリッシュな映画ならではの説明不足、設定がいまいちよくわからん面もありますが、そこは皆さんの機敏な知性で補ってあげるといいんじゃないかな。

ヴェジタリアンにはもっとも縁遠い映画ですが、それでも楽しめました。

非ヴェジの方であれば、観劇後焼肉を食べるとなお余韻が深まります!!!