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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

ミスト/狂信者たちは滅びない

ロッド&リールの巻(レビュー)

問題作『ミスト』です!

ご覧になった方も多いのではないでしょうか。衝撃のラスト15分!!!

確かに衝撃です。この映画ほどネタバレの危険度が高いものも珍しいのですが、なんとかそこを迂回して語りたい。語れるか?

そこを置いたとしても、スティーブンキング原作の世界観が素晴らしいよね。霧(ミスト)の向こうから迫り来る異界の生物たちはどれもぶっ飛んでます。

知的生物はいないのか?

とホラーパニック映画とは別の興味も持ってしまいますが、そんなのは出てきません。ひたすら人に害をなすものたちばかり。

最後に出てきた巨大なやつはそーでもないか。

洪水に浮かぶ箱舟のようなスーパーマーケットに閉じ込められた人間たち。文字通り旧約聖書的な予言を繰り出す狂信的なおばちゃんも登場したりしてもーてんやわんやですわ。

主人公たちは霧の海に漂うことをやめ、自分たちの小さな小船たる自家用車でスーパーの外へ漕ぎ出すのですが………

ここからはどーしてもネタバレになっちゃうな。それでもいいなら読み進めてちょーだい。

宇多丸師匠もポッドキャストで言ってました。これは「選択と結果」を巡る物語であると。

そーなんですよね。

普通なら、主人公たちは多大な犠牲を払いながらも生き残るのですが、この映画では、「たち」ではなく主人公だけが不条理にも生き残ってしまう。そんな展開です。ほとんど望まざる生存であるわけですね。

具体的には、自分の息子も含めた最後のパーティーメンバーを残らず撃ち殺してしまうのです。

「パパ、怪物に僕を殺させないで」という息子との約束を守るため。

その後、外からの助けがくるのです。ミストへの対策を講じた軍が部隊を派遣するのですが、霧の中から彼らが現れ出てくるほんの数分前に主人公のデイヴィッドは仲間と息子を始末をつけてしまっていたのです。

なんという皮肉でしょうか。

ガソリンがつき、もうこれ以上この異空間を抜ける手立てはないと絶望した、その数分後に霧の果て、異空間の切れ目がやってくるとは!!!

あと5分待っとけよ!!!!の世界です。

確かに霧は深く、厚く、絶望的に感じたよね。でも、もう少しみんなを射殺する前に最後の世話話でもしとけば!!!!そんな埒のない「もしも」を弄んでみたくなる。

この映画、観終わった感じは最悪かもしれませんが、普通のホラーへの挑戦でもあるんだよね。通常なら死亡フラグが立つ人間が生き残っていたりする。最初に子供を救うためにミストの中に出ていくお母さんとかね。

それに、あの狂信者のおばちゃんに従ってマーケットに残っていたやつらもだって、たぶん生き残っていると思う。あいつらみたいなファナティックな集団は死なねばならないという思い込みこそが逆に僕らの映画的狂信なんだよね。

僕らの「ねばならない」を根こそぎ破壊してくれる後味悪くも教育的な映画であります。