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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

パンズ・ラビリンス/美しい暴露

$続・エビで龍を釣る

パシフィック・リム絶賛公開中のギレルモ・デル・トロ監督作品『パンズ・ラビリンス

残酷なファンタジーです。少女の幻想の外には、それを取り巻く血生臭い現実があります。

軍事独裁政権化のスペインの田舎で繰り広げられる軍とレジスタンスの攻防。

司令官の妻となった女の娘であるヒロインはそこで地下世界への秘密の入り口とそれを守るパン(牧神)に出会うのですが、少女が地下世界に帰還し、王女の座に戻るには3つの試練を超えなくてはいけない!

少女のファンタジーは窒息させられるのか。それとも現実に風穴を開けるのか?

答えはどちらでもある。またどちらでもない。といったようなラストで提示されます。

いや、これは少女のファンタジーが勝ったと思いたい。

結末において愚かな支配は終わり、レジスタンスが村を取り戻すところで物語は締め括られます。

が、村人にあらぬ嫌疑をかけ、拷問と殺戮を行った少女の義父となる司令官、物語の最大の悪役たる彼もまた、彼自身のファンタジーを生きていたことが明かされます。

勇敢に戦死した父への哀慕と敬愛が歪んだ悪しきファンタジーを彼の中に作り上げ、それが現実のファシズム政権と結びついて芽を出したのです。

だからこれは、現実VSファンタジーという構図の物語ではないのです。

むしろファンタジーVSファンタジーなのです。そしてファンタジーは善悪をともに含み、確固たるものと思えた現実すらも侵食していく。

がりがりがり。

だから、これは思春期の夢見がちな少女が抱く幻想の行方を描いたものというよりも、すべてが所詮は幻影が織り成す瑣末な夢だという、そんな美しい暴露となるでしょう。

個人的には、魔法のチョークで壁に扉を開く場面が好きだな~