読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

ウォッチメン/ヒーロー不在につき、伝言をどうぞ

ウォッチメンです。

コミック版はずっと以前に読んだのですが、映画もよかったです。ほとんど原作に忠実な作りでオチを忘れていた僕にも新たな発見がありました。

ヒーローが普通に歴史に関わっているパラレルワールドでのストーリーです。

しかし、ヒーローが事件に関与することは法律によって禁じられたあとの時代なので、すでにヒーローたちは引退したりしています。

ここには人類、そして超人類たるヒーローという対比がありますが、実はその2層ではなく、3層構造になっているんですね。

人類、そしてヒーロー、さらにヒーローさえ遥かに超えた超存在としてのドクター・マンハッタンです。

$続・エビで龍を釣る

すべての見晴るかす存在としての神、それに最も近づいた人間としてのドクター・マンハッタンは物語に関与と非関与を繰り返しているように見えます。なんとも煮え切らない男笑

一方、ヒーローでありながら人間の愚かさ醜さを見切ってしまい、悪徳に染まるアンチヒーローとしてのコメディアン。

この二つの極を行き来するのは、もうひとつの主役とも言うべき、ロールシャッハ。かれの手記が物語の語り手になるのですが、この人、ウォッチメン(見張り)に徹することなく、かなり忙しく過激に動き回ります。

この三者の在り方が精妙な歯車となって物語を駆動させていくんだよね。もちろん黒幕のあいつとかヒロインのあいつとか、もろもろいますけど、この三人の思想と存在感がこのストーリーの大まかな土俵を区切っているような気がします。

神のごとき存在であるくせに「神などいない」と言い切るドクター・マンハッタン。悪であるがゆえに、神にすがることをやめないコメディアン。

そして妥協なき正義を貫くロールシャッハ。彼はまさに神の不在を絶望的なまでに知ってしまったがゆえに、自らのその代行者となろうとしているのです。

こういう切り取り方をすると、すっごくアメリカ的っていうかキリスト教世界的な話ですね。

ちなみにラスト付近は原作と違うようなだが、ちゃんと比べて確かめていません。素直なヒーローものとは言いがたいですが、すごく楽しめる作品です。