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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

西の果てへ――ゲド戦記研究

ロッド&リールの巻(レビュー)

「われわれは自由を選んだ。人間はくびきを選んだ。われわれは火と風を選んだ。人間は水と大地を選んだ。われわれは西を選んだ。人間は東を選んだ」

ここで「われわれ」と名乗っているのはドラゴン。

ゲド戦記の世界のみならずファンタジーの代名詞ともいえる仮想の生き物。

東洋では風雨や河川の神であり、西洋では邪悪で狡猾な怪物として描かれることが多いのですが、ゲド戦記の作者ル=グウィンにとってはどうでしょう。

少なくともドラゴンは非情に知性的で、超自然的であるよりも、どこか懐かしいようなものとしてあります。遠い曾祖父たちに会うような感じかもしれません。

なぜなら、この世界観の中ではドラゴンと人間はもともとはひとつの生き物だったんですね。

ここで最初にドラゴンの語りに戻ります。

もともとドラゴン人間として存在した生き物ですが、自由を選んだものはドラゴンになり、くびきを選んだものを人間になった。

だからこそ、ドラゴンには富への憧れがあり、人間には自由への憧れがあるということらしいのです。選ばなかったものへの羨望が残っているんだね。

ドラゴンの画像を探したけど、あまり知性や気品を感じさせる絵はなかった。みんなモンスターとしてのドラゴンだったけど、↑の絵は高等生物としてのドラゴンを上手に表現してて素晴らしいんじゃないでしょうか。

人間の脳の一番古い部分は爬虫類の脳と呼ばれています。

それは脳幹つまりコアに近い部分で、生存の最も根本的な機能を司っている。ゲド戦記の世界閑はあながちフィクションではないかもしれない。

龍たちは僕らの奥深くにまだ息づいていて、西の果てに羽ばたく日を待ち望んでいるのかもしれない。