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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

無神論者の地獄めぐり

ホドロフスキーのDUNE』そしてホドロフスキー監督23年ぶりの新作!『リアリティのダンス』を見てきた。

ドキュメンタリーの前者は見てもらえばわかる。と思う。

実現しなかったSF大作「砂の惑星DUNE」がどれだけ後世に影響を及ぼしているか、それも隠然と浸み込んでいるため、影響を蒙ってる本人たちですらその影響下にあることがわからないほど。

作中にもあったが例を挙げれば枚挙にいとまがない。ので控えておくが、ひとつだけあの『プロメテウス』の建築はまんまだな、おい、と言いたい。

ダリとかオーソン・ウェルズが出る予定だったという豪華すぎるプロジェクトだったため、頓挫こそがまさに必然だっと思える。こんな作品を完成させ、しかもヒットさせていたら、たぶんホドロフスキーは運と生命力を使い果たして早死にしてたんじゃないの。

ま、それくらいの作品だったわけさ。

で、DUNEのお蔵入り(デヴィッド・リンチが作ったわけだけど)以来、何も映画を作っていなかったホドロフスキー監督が久方ぶりに作ったのが『リアリティのダンス』なのね。

ホントは『エル・トポ』『ホーリーマウンテン』などにも触れたいのだけど、その能力は僕にはなさそうです。観たのが随分前ということもあり、詳細が曖昧だし。

ホドロフスキーの作品はいつもスピリチュアルで宗教的で、なおかつ宗教の宗派意識から自由なので好きだ。難解に見える寓話性も実はストレートなことが多い。

ドキュメンタリーの談話でも言葉を飾ったりもって回った言い方をしない、率直な人柄がうかがえる。突拍子もないが、難解さを誇らしげに提示したりしないから安心してほしい。

今回の新作は、監督自身の自伝的な作品であると同時に、無神論者の地獄巡りという側面があって二重に面白かった。個人的にはレイナルド・アレナスのフィクション小説を思い出した。

主人公が出会う海岸の修行者はインドのサドゥのようだけれど、少年に教えるマントラは般若心経の一節だし、与えたペンダントといえば、それぞれユダヤ教イスラム教キリスト教のシンボルだった。

節操がないのだ。でもそれがいいところ。

100脚の椅子を納品して死んだ聖なる木工店のドン・ホセが救世主の名であると同時に、われわれすべての人間の魂の名前であっても僕になんの不都合もない。