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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

安定の島へ!

元素の周期表がキテる。

見てるだけでも面白いのだが、ちょっと深入りすると余計に面白い。

学生の頃に立ちはだかった暗記すべき壁ではなく、宇宙の(神様の?)パズルとして眺めてみると心震えるほど楽しいのだ。

スプーンと元素周期表――個人的には名著だと思う抱けれど――を読んで、周期表にまつわる人類の歴史、それも数限りないドタバタや右往左往を知って余計に愛おしく感じられるようになった。

科学者の悪戦苦闘はもはやコントじみているし、経済や医療、芸術にまで及ぶ元素の影響は圧倒的で眼がくらむ。

アルミニウムが金や銀よりも高価だった時代があったことをご存知だろうか。大切な客にはアルミの食器で食事を振る舞い、それほどでもないゲストには銀食器をあてがったいた貴族や王族たち……。

ガンディーと塩、それにヨウ素の複雑な関係は確実にインドの歴史を変えたし、もちろんウランプルトニウムはよくも悪くも核時代を開いた。

まー人間から星星まで、100種類とちょっとの材料からできていると思えば不思議と言えば不思議。

しかも、電子と中性子と陽子の数で元素の種類は変わっていくのです。前回の原子転換や錬金術の発想は「なんだ数が違うだけか、だったら数を変えてやればいいじゃん」というところから誰もが思いついてしまう。

この本に出てくる突飛な物質はどれも空想をかきたてる。しかも、ただの空想に終わらない理論的可能性を秘めていて、すでに実現しているものもあるし、これから実現しそうなものもある。

例えば超流動体や超伝導などの現象は比較的知られているけど、その不思議さには飽きることがない。

縮退物質やクォークグルーオンプラズマについてはイメージすることもやや難しい。

結晶構造の違いで2000度以上でないと融解しない氷(紛れもないH2O)などはカート・ヴォネガットの『猫のゆりかご』に出てくる世界を覆うアイスナインを思い出させる。

そして超原子や量子ドットの話となると……その秘められた潜在的な可能性に人間が戯れるために宇宙がデザインされたとしか思えなくなる。

ちょっと興奮のせいで脱線したかも

周期表はいまだ未完成なのは知っていた。

だんだんと重たい元素が付け加えられて表は拡大していくはずなのだが、新しい元素たちは核が重たすぎてあっという間に崩壊してしまう。超短命。まさに一瞬で潰えさるうたかたの泡。

僕らが手に取るなんてもってのほか、数個の原子が誕生したそのそばから宇宙の塵と成り果てる。

諸行無常すぎるだろ。んで、そんな儚い存在に巨額の資金を投じて何が楽しいのだ、とお怒りになられる向きもあるかと思います。

しかし、

周期表の先には、安定して存在できる新たな人工元素の存在が推測されているんです。それは比喩的に「安定の島」と呼ばれていて、陽子と中性子の数が魔法数という安定性のある数で構成されているからなんですが、それは置いといて。

その安定の島に上陸したら何が起こるのか? どんな性質の物質が登場するのか……そしてそれは僕らの日常をどう変えてしまうのか。わくわくします。

SFじみた超物質を期待しているわけではないが、やっぱり期待しちゃうじゃない。

あと数種類の新元素が見つかったらワープが可能となり、恒星間航行ができるようになるとか。そんなロマンチックな説を耳にしたこともある。

そこまでじゃなくても、常温で気体の金属であるとか、そんなイメージしにくい何かが実現したら僕らのイマジネーションはさらなる飛躍と遂げるよね。

安定の島、それは安定でありながら、同時に異形の島かもしれません。ワンピースに出てくるグランドラインの島々のみたいな笑

賢しげに振舞っちゃいるけど人類のまだ大航海時代もまだ終わってないんだな。