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クレバスと炸薬亭

映画や本、お芝居などのレビューを中心にやってくよ。

ディストピアの完成(3%)

ロッド&リールの巻(レビュー)

またまたNetflixもの。

けれど、映画ではなくドラマ。しかも未来もしくは平行世界のブラジルというかラテンアメリカが舞台らしい。

 

アマゾンのあたりという説明が作中一度だけあるのと、話してる言葉がどうやらポルトガル語だというのだけはわかる。

 

貧しい97%と選ばれた3%で分割された世界。3%は「島」と呼ばれる楽園に住んでいる。とはいえ、彼らとてはじめから島に住んでいたわけではない。20歳になると受けられる厳しい試験を勝ち残ったものだけが移住できるというわけ。

 

97%の方は絵に描いたような貧しい生活をしている。わかりやすいゲトーなバラックが立ち並ぶ超下流社会だ。誰もが3%に入ることを夢見ている。

 

その試験をプロセスというのだが、そのプロセス最高責任者と受験生たちの複雑なドラマがわずか1シーズンの中で凝縮して物語られる。

 

ドラマの機微はさておき、美術やガジェットがとてもいい。清潔でシンプルなミニマムなデザインは島とプロセスに属す。彼らの服は左上腕部が十字型に切り取られていてそこには予防接種の痕がある。

 

それが3%の印となる。

 

その聖痕の意味はラストで明かされるのだが、どうだろう。言われてみればそうだとしか言えない合理的な世界が島なのだ。腐敗や堕落の原因である世襲制を禁じるために島の始祖たる人間たちが選んだ手段とは?

 

結果的に島が通常の意味での楽園でないことがわかる。それでも島を選ぶ者もあれば、もう一度元の生活に戻る者もある。

 

このドラマにおいて美しい形でディストピアが完成している。残酷で潔癖ではあるが、悪はそこにない。悪がいないだけにむしろ余計に残酷な世界かもしれない。

 

こういうディストピアものは現実だといけ好かないが、フィクションとなると途端に好物になる。いや、いまや、現実世界が相当なディストピアなんで、フィクションの世界に押し込めておけば安心できるのかもしれない。

 

アメリカの富の半分以上をわずか1%の富裕層が握ってるんだっけ?

 

このドラマ以上のディストピアがすでに成立してる以上、まさに生ぬるい物語とも言えるのだが、そこはキャラクターの多面性や情念、裏切りなど、まさかこいつが!という展開は盛りだくさんで大好きでした。